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2012年9月7日金曜日

技術者がソフトシステムズ的思考になじめない理由

技術者のみならず、

理系的素養がある者は、

物事を判断する際に、

主観を排除して、

できるだけ客観的に捉えようとする性質を

持っているものです。



そういわれると、頭の中では、

「必ずしもそうではない」

「柔軟に対応できるもの」

と思われる方は多いでしょう。

ですが、物事の判断を求められる際には、

理系的思考が邪魔をしていて、

柔軟に対処できていない状況をよく目にするのも事実です。


コトの根本的原因は、

技術者が普段の仕事で対象としている事柄については、

極力、確実なものとして把握しようとすることにあります。


研究開発の対象物が、不確実なものである限り、

研究開発は始めることができないからです。

研究開発の成果は不明確・不確実ですが、

成果を生み出すために取り扱う対象は、

明確に把握して入手できるものであるはずです。


ところが、ビジネスを開発する場合はどうでしょうか?

確実である研究開発対象とは異なり、

誰に対して、どのような手段で、どのような価値を提供するのか?

そのいずれも、確立した既存事業以外のすべての場合において、不明確なものです。


ソフトシステムズ方法論では、対象となるのは、「問題的状況」です。

この状況というのは、そもそも主観での捉え方が数多く存在するので、

客観視という態度はなじみにくいのです。

ソフトシステムズ論の適用の場では、

経験も知識も劣る、専門知識のない人間の主観的な捉え方を

対象とすることが多いのです。

そして、このことが、技術者に居心地の悪さを感じさせてしまうのです。

ソフトシステムズ論では、主観を取扱の対象とはするものの、

その取扱は、知的な厳密さをもって行われます。

対象も操作も客観的、論理的である研究に対して、

ソフトシステムズ論では、対象は主観的であるが、

その取扱方法は、筋が通っているのです。


このことに気づけば、

理科系の素養のある人間も、もうすこしは、ソフトシステムズ方法論に

理解を示すことができるようになるはずです。



2015年1月追記:

二年ほどまえにも書いたのですが、デザイン思考の源流には、

ソフトシステムズ論(SSM)があります。

SSMにおける「リッチピクチャ」について学んでみると、

主観や客観の捉え方と利用の仕方というものに、より深く理解することができると思います。