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2012年2月15日水曜日

イノベーションと知財

あたりまえのことですが、

知財部が存在する理由は、

専門に特化した仕事をやらせること。

これは、経営層への説明責任を果たすことが前提になっているわけですが

前提でもある説明責任が、しっかり機能していないことが多いのが実情ではないでしょうか。



日本のモノづくりにおいてはアジア勢の勃興もあって、

やられっぱなしの感じがあり、専門に特化してやらせて(任せて)いたことが実は、


「役に立っていない?!」

「うまくいってないんじゃないの?!」


って疑問がこの数年は経営層から出てきています。



つまり、

「おまえら、責任果たしてないんじゃないの?」

ってことですね。



でも、これはあっち側(経営層)からの意見。

同じく、こっち側(知財部門)からは、

「おまえら、ちゃんとリーダシップ発揮しろよ!」

って見方もできるわけです。

これは別に喧嘩を売っているわけではないのです。



このような問題の根底には、知財分野、経営層のどちらの人材にも

マインドセット上の問題があるのだと私は考えています。



経済が右肩上がりであったころは、

やるべきことが明確で、

いかに効率よく実行していくのかという、"How" が問題でした。

だから、知財の仕事も黙々とこなせば結果はついてくるであろうという状態だったわけです。



そいういう状況下で組織づくりをしてきた知財部門では、

結果的に

やるべき事柄やその範囲を限定してあげないと、
実力を発揮できない人

が増えちゃったんじゃないの?


というのが私の正直な感想です。

そしてそのような伝統は、多くの知財関連組織に今でも息づいているはず。



現在、そして将来は新たな価値を生むイノベーションが益々必要になっていくわけですが、

これは、不確実性の高い事柄や、二律背反的な事柄を扱う必要性が増大することであると思います。

そのような環境下では、"Why" や "What" を自ら考えていくことが必要になるはずです。

知識の刷り込みを熱心に行い、何を行うかは与えられることの多い知財業界は、

将来のイノベーションにどれほどの影響を与えることができるのでしょうか?


知的資産経営を実践しようとする経営陣は、

このことをよく考えて、知財部門の仕事の行わせ方を考えていく必要があるでしょうね。

そして、自らの仕事の行い方も考えていく必要があると思います。

2012年2月12日日曜日

Innovation創出のために知財人ができること

知財経営だとか、知財立国だとかが叫ばれて約10年ぐらいでしょうか。

ここのところのトレンドは、すっかり「イノベーション」に変化したように思います。


欧米の経済関係の雑誌、新聞、ブログでの記事において、イノベーションという言葉が

頻繁に見受けられます。

その中で、知財人の立ち位置としては、どこを基準にすればよいのかに

当然興味が持たれます。


参考になる教材としては、私はこの本をお勧めいたします。


「イノベーションの達人-発想する会社を作る10の人材」
  トム・ケリー&ジョナサン・リットマン


この本で取り上げているのは、イノベーションを推し進める10種類の人間です。

イノベーティブなデザイン企業と知られるIDEO内で認識されてきた人間たちです。



この本では、10種類の人材を、大きく3つに分類しています。

(1)情報を収集し、拡散する役割を担う人材

(2)イノベーション実現のための土台やプロセスを作り上げる人材

(3)イノベーションを実現する人材




伝統的知財業務を行っている人で正直ならば、おそらく、

「我々はどこにも関係ないではないか」

と思われてしまうことでしょう。


その通りと思います。


更に悪いことに、この本の冒頭では、

イノベーションを阻害する人材として天邪鬼(あまのじゃく)的人間、

すなわち、全体の空気を一瞬にして悲観的にしてしまう反論を行うタイプの人間が

描かれています。


実は、知財人には、このタイプが多いのではないでしょうか?

とくに、できるタイプと認識されている人に多い傾向かもしれません。


問題解決能力が重要との考えで分析能力を磨いている人は、

ことあるごとに、提示されるものの欠点を見つけるのがうまいものです。

しかし、逆に全体に自発的に提示するものを持ちあわせていないことが多いのも事実です。


「健全な思考を行うための悪魔の代弁者(devil's advocate)の何が悪い」

と考えると思いますが、適用する場面が違います。



このような分析志向での行動は、いわば既存事業を問題なく進めていくような場合には、

問題を予め表出させ、それに対処する計画を練ることができる点で、非常に有益です。


しかし、イノベーションを実現しようとするということは、

「新しいアイデアを発想し、実験し、鼓舞し、確立していくことを目指す」ものです。


新しいことを思い描くだけではなく、行動し、実践していくことが必要なのです。


知財業界で習得したことを、捨てる勇気のない人間は、

イノベーションにかかわらせるべきでないというのが私の持論です。

2012年2月2日木曜日

知財評価とビジネスの統合

「知財の評価」というと、

出来上がった発明の価値(技術的、学術的、経済的な価値)を想定することが多い。

これは、暗黙のうちに、評価する側はビジネスを作り上げることには関与せず、

部外者として、技術的、学術的、経済的側面から評価するという考え方

の上に成り立っていることが多い。


ところが、ビジネスを作り上げていく、いわゆる統合のための活動においては、

種々の場面で評価に基づく意思決定が行われている。

この部分での評価の手法は、知財人が勉強する、通常の評価手法とは

趣を異にするものであり、かなりソフトな方法論といえよう。


これは、勉強しても、使いものにならないことがあるって意味ですが、

そこまでしっかりと各手法の適用の限界を理解している人は、あまり多くはないでしょう。

知財業界って、やっぱりカモなんじゃないか

先日、某大学の知的資産経営関連のセミナーに行ってきました。

数名の教授陣が簡単なプレゼンを行い、その後は先生方のパネルディスカッションでした。

2時間程の時間は、とても有意義に感じました。



とはいっても、内容自体は、ほとんどが当日宣伝していた出版物(購入済)に書かれている内容や、

先生方の過去の発表内容がほとんどで、さしあたっての目新しさは感じませんでしたが。


あえて、良かった点を挙げると、

自分なりの考えや経験を、たまにはしっかりと他者視点での発表と対比して、

相対的に位置づける機会だったのではないかと思います。



会場を見渡した限り、参加者はかなり高齢の部類に入る人が中心で、

それなりの役職に就いている人ばかりだったと思われました。

また、セミナーのタイトルからして、参加者は知財業界の人が中心だったと思います。

そこで、感じたのは、はたしてこの人たちは、日本のイノベーションに影響を与えられるのか?

という率直な疑問でした。



私自身、知財業界に入って、まず感じたのは、

「どいつもこいつも、保護の話ばっかりで、ビジネスには関心ないのか?」

ということでした。


一通り知財の内容を知った後に興味を持ったのは、「標準化」でした。

世の中、「独占排他」的な点ばかりを強調する知財人ばかりで、

標準化や、オープンソースについて興味ある知財人というのには出会ったことが

当時はありませんでした。

そういった情報は、いつも海外から入手するものばかりでした。



あれから、十数年。


いま、ようやく、知財業界でも、

「これまでのやり方じゃ、まずいんじゃないの」

ということが普通に議論できるようになったのだと感じます。


そこで感じるのは、やはり、

「企業の中で、あんたら、何してたんねん、知財人?」

ということではないでしょうか。


知財人は、おおむね、勉強熱心な方が多いと思われますが、

新しいことに踏み出したり、既存の考え方以外の自由な考え方で物事を観察し、

そこで得た知識を自らの活動に生かすことができない性質の人が多いのだと思います。


セミナーの講師陣は、いずれも、知財をもともと研究していた人ではありません。

日本の事業機会を増やすために知財に着目している人たちです。

知財業界には、こういったレベルで積極的に活動できる人材が、まだまだなんだと実感した次第です。

現状、というか、おそらくこれからも知財業界は、その大部分において

口をあけて勉強すべき内容が、他人から与えられるのを待っているだけの人だらけなんではないかと思います。