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2011年8月10日水曜日

読まれるOutput!

「需給バランスに徹底的にこだわること」


との指摘がある。


この点について、知財人は本質的に意識していない人が多いと思う。


伝統的知財関連業務においては、すでに仕事のフローが確立されているため、


日頃の業務において、需要と供給の関係を考える機会が必要ないからだ。




これを意識するためには、ブログを書いてみたり、種々の情報提供をTwitter


などを通じて行ってみるのがよい。


自分の関心領域と、自分を取り巻くネットワーク内での関心領域の違い。


これを意識できるかどうかは、自分の専門領域の成果を、


専門外の人間にうまく説明し、活用してもらう訓練となるはずだ。


こういった行動をとっているか否かで、


その知財人が、我田引水的な知財志向的な仕事をしているにすぎないか、


それとも、ビジネスに役立てられるリソースとしての知財を


組織内に広く知らしめることが可能か、

大きな違いがでてくるだろう。













2011年8月9日火曜日

知財関係者のタイプ分類

日頃、知財関連部門の人間と接する機会が多いので、

彼(女)らを、いくつかのタイプに分類してみた。


1.調整型

レベルの高い人、低い人がそれぞれいますが、

レベルの高い人は、リエゾン的役目をよく理解されています。

自らの専門知識を必要以上に高めることはせず、

必要に応じて、しかるべき人間から情報やコメントを

引き出すのに長けています。

一方、レベルの低い人は、研究開発の人間と、特許事務所等の

知財サービス提供者との連絡係にすぎません。

柔軟な対応が全くできず、常に責任回避型の行動をとります。


2.とりあえず型

特に知財に興味があったわけではないが、

配属先がたまたま知財関係部署だったという方。

知財の専門書等は特に読まず、弁理士試験を目指すわけでも

ありません。

社内の規定を守って、流れ作業的な仕事をしている感じがします。


3.弁理士試験受験型

とにかく、業界知識を身につけて、早く業界人になろうとするタイプ。

技術者からのコメントをもとに外部へ情報を提供する際には、

「・・・と思料いたします」などという文体を使って、

コメントしてきます。


4.上がり型

自分は弁理士だし、社内でも一目置かれている存在であることを

自負するタイプ。

技術者からの情報も、外部の特許事務所からの情報も、

常に上から目線でコメント。

知財関係の知識は、そこそこ広く習得したので、

自らの学習意欲を満たし、自尊心を保つため、

色々な分野の勉強を始めたりします。

傾向としては、判例や外国法等の法律系に走る人と、

技術経営等の経営系に走る人とがいます。

後者は、2000年代前半から少しづつ増えてきています。



目立ったタイプとしては、こんな感じです。

みなさんの印象はいかがでしょうか?

2011年8月2日火曜日

CIPOに求められる特徴・属性

CIPOは様々な用語の省略型であるが、

知財人には、Chief Intellectual Property Officerとして

認識されていると思われる。

本日は、CIPOについて。



日経BP知財AwarenessのCIPOフォーラムには、

CIPOフォーラム設立の目的が次のように記載されている。

“知財を生かした経営”もしくは“経営を意識した知財戦略”を実現するためには,知財の専門知識だけを理解した知財担当者が立案できる従来型の知財戦略(知財自体のマネジメント)では不十分である。すなわち,経営と知財の両方に精通して一貫性を持った戦略を立てられる「CIPO(chief intellectual property officer)」が,経営視点から知財をとらえ直し,経営と知財を密接にリンクさせた形で知財経営戦略を立案する必要がある。
「従来型の知財戦略では不十分である」としつつも、

フォーラム内の記事を見てみると、

大半が法制度の話であり、

フォーラムの目的と乖離したコンテンツを提供している始末である。

いくら目的を掲げても、これでは推進できないであろう。


同じく日経BPの記事では、

著名なキャノンの丸島氏へのインタビューを通じて、

CIPOに必要な能力について述べているが、こちらはかなりまとも。

具体的な能力として、丸島氏は次の3つを挙げている。


  1. 知財を事業の観点からみることが可能な人材であること
  2. 研究開発⇒権利取得⇒活用の知財創造サイクルの全てに対応可能な人材であること
  3. 知財創造サイクルの核になって、そのサイクルを大きく回せる人材であること


他にも、知財部は知財部のためだけに仕事してはいけないとか、

R&D部門、事業部門と知財部門とが協調・連携した三位一体の

活動をする必要があるとか、

基本的なことが述べらている。


しかし、実際にどのような人間が、どのように進めていけばよいのか、

という具体性に欠ける記事でもある。


海外でも、CIPOという名称が認識されているようであり、

簡潔にまとめられている記事では、

CIPOに必要な特徴(属性)として、次の5つが挙げられている


  1. シニアの要職に就く人材であること
  2. 交渉力のある人材であること
  3. 互いに独立した様々な「知」をまとめ上げることができる人材であること
  4. 実行力がある人材であること
  5. 法律の知識があること



まず、3と5を見てほしい。

法律の知識を有しつつも、それに固執することなく、また、

他分野の知識をも統合することができるということを。

これは、一言でいうと、

物事を俯瞰できる能力を有することといえるであろう。


この俯瞰する能力は、個々人の能力として備わっている

人間固有の能力と思える。また、2の交渉力についても、同様に

人間固有の能力であると考えれる。

そうすると、属性に基づいて最適の人材が居れさえすれば

よいように思える。

だが、実際には、組織上のバックアップが必要であることが、

1をみるとわかるであろう。

1~5の順序は、この記事では意味を持っている。


客観的にどんなに正しい結論を導こうとも、

組織内の部門間の対立や、利害関係がある場においては、

組織全体にとって正しい意思決定を行うことは難しい。

だからこそ、トップの直属の要職である必要がある。



要職に就く者であるからこそ、

CTO、CLO、CFO等のCxO人材との関わりが持てる。

そういった異なるバックグラウンドを持った人材との

交渉力が次に求められる資質である。



この参考資料では、CIPOが担うべき実務として、

IP Protectionや、IP Litigationを含めている。

だが、実際のところ、大企業の場合に、

出願件数が多く、また訴訟に巻き込まれた場合や、事前に予防する場合

の全てにCIPOが直接的に関与することは、

時間的に困難ではなかろうか?



従って、伝統的な手続主体の知財部門は依然として重要であり、

むしろ知財部門はCIPOなど目指さずに、伝統業務に集中すべき

ともいえる。

一方で、CIPOにはCxOレベルの人間に知財を経営の言葉に翻訳して

語る能力が重要と考えられるが、これは伝統的業務の経験を通じては

習得は難しいであろう。


日本に限らず、IPの実務家は、この部分の能力開発に疎いのが

実情ではなかろうか?


伝統的業務の知識を有しているというプライドを捨てずに、

CIPOになることはできない。


知財部門の正統派人材からCIPOを抜擢するのは、

多くの場合、本来期待されるようには、うまくはいかないであろう。

2011年8月1日月曜日

知財とモデリング

本Blogにおいて、数回、モデルやモデリングについて書いてきた。

参考1 参考2 参考3

今日は、プロセスのモデリングについて。



プロセスに関するモデリングについては、

知財業界人は、あまり興味を示さないという印象がある。

理由の一つには、

プロセスの特許は、侵害の発見が難しいという、

この業界特有の事情があるのが関係しているように思える。

権利として価値が高くはないので、

仕事上も、あまり力が入らない

ということであろうか。

明細書でも、前半のプロダクトクレームは

気合いが入っているが、

最後にちょろっと、プロセスクレームが付いていることは

特許出願において良く見られる現象だ。

(文言が少ない方が、権利範囲としては広くて好ましい

という知財業界特有の事情もあることにはあるが)


果してこのような仕事を行う人間が、

知財コンサルという形で顧客のビジネスに向き合った時に、

顧客のビジネスプロセスにどれほどの価値を提供できるのであろうか。


実際に、多くの知財業界の人間が自らの価値を顧客に提供する際、

物や、物の権利を、議論の中心に据えてしまうのが現実だ。


「この技術を生かして製品を開発すべき」

「この製品をカバーする権利を取得しましょう」

「そして、その権利を積極的に活用しましょう」

等、が知財人の典型的な反応であろう。


これらは知財部門の業務として個々で見た場合には、

なんら悪いことではない。

だからこそ、このこと自体が、知財人を介した

知財コンサルの成果をよいものにすることを困難にしている。

このことをうすうす感じている知財人もいるが、

どうもプライドが邪魔しているようだ。



知財中心の考え方に固執する限り、

市場や経営上のニーズを捉え、

これらに対応していくために、

社内に柔軟なアクションを起こさせることは難しい。

実際に、知財が中心になり

社内の種々の部門を一つにさせることは、

手法的にも、人材的にも困難であろう。



そもそも知財という、とっつきにくい概念を中心に据えてしまうと、

ビジネスのプロセスとして、誰が、いつ、何を、どのようにするのか、

というアクション志向での議論を開始しにくい。



知財業界人が思っているほど、部外の人間は、知財を中心には

持ってきたがらないし、持ってきたとしても、

「知財の問題なんだから、知財部がやってよね」

という他人任せの潜在意識があり、

事は一筋縄ではいかない。


そう、この他人任せの現況が、

「知財」という衣をかぶった実体によりもたらされていることを、

知財人は、もっと認識すべきであろう。


集まった人間の中で、知財の知識も経験も豊富なのは、

知財人だ。

だが、ビジネスを作り出そうとする場では、

それは、心の奥底に閉まっておこう。

・・・・・・・・・

ビジネス開発には、製品・サービスのビジョンが必要である。

そのビジョン如何によっては、製品・サービスのスペックや、

対象とする顧客が異なってくる。

当然、そのための社内外のプロセスも柔軟に対応させる必要がある。



そこにおいて、知財や技術は、点にすぎない。

点と点を結んで線とし、

線と線を結んで面とすることでビジネスの構成が成り立ってゆく。

その中で点である知財や技術は、場合によっては

他の点で取って代わられる物でありうる。


このようなプロセスにおいて、

知財を知財として意識せずに、

議論をスムーズに行わせるためには、

自身の専門分野での物事を編集して、

部外者に取り扱いやすい形体で提供する必要があることは、

賢明な読者ならば自明なことであるとわかるであろう。

・・・・・・・・

Wikipedia:ビジネスプロセスモデリング より抜粋
ビジネスプロセスは特定の顧客のため、特定のサービスまたはプロダクト(特定化された目標)を創り出すために関係づけられ、構造化されたアクティビティまたはタスクの集合である。ビジネスプロセスはそれら自身の属性を持つ、複数のサブプロセスに分割できるが、しかしスーパープロセスの目標を達成するため貢献する。

プロダクトやサービスを提供するビジネスのプロセスにおいて、

技術だの、知財だのは、直接的には語られていない。


さあ、どうする、知財人。


自らビジネスプロセスの中に飛び込める人材になるか、

既存の伝統的な特許出願の業務として、

ビジネスのプロセスから外れた領域で、

しこしこと仕事する人間になるか。

両者を分けるポイントは、

ビジネスのモデリングを行う力であると私は考えます。