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2011年8月1日月曜日

知財とモデリング

本Blogにおいて、数回、モデルやモデリングについて書いてきた。

参考1 参考2 参考3

今日は、プロセスのモデリングについて。



プロセスに関するモデリングについては、

知財業界人は、あまり興味を示さないという印象がある。

理由の一つには、

プロセスの特許は、侵害の発見が難しいという、

この業界特有の事情があるのが関係しているように思える。

権利として価値が高くはないので、

仕事上も、あまり力が入らない

ということであろうか。

明細書でも、前半のプロダクトクレームは

気合いが入っているが、

最後にちょろっと、プロセスクレームが付いていることは

特許出願において良く見られる現象だ。

(文言が少ない方が、権利範囲としては広くて好ましい

という知財業界特有の事情もあることにはあるが)


果してこのような仕事を行う人間が、

知財コンサルという形で顧客のビジネスに向き合った時に、

顧客のビジネスプロセスにどれほどの価値を提供できるのであろうか。


実際に、多くの知財業界の人間が自らの価値を顧客に提供する際、

物や、物の権利を、議論の中心に据えてしまうのが現実だ。


「この技術を生かして製品を開発すべき」

「この製品をカバーする権利を取得しましょう」

「そして、その権利を積極的に活用しましょう」

等、が知財人の典型的な反応であろう。


これらは知財部門の業務として個々で見た場合には、

なんら悪いことではない。

だからこそ、このこと自体が、知財人を介した

知財コンサルの成果をよいものにすることを困難にしている。

このことをうすうす感じている知財人もいるが、

どうもプライドが邪魔しているようだ。



知財中心の考え方に固執する限り、

市場や経営上のニーズを捉え、

これらに対応していくために、

社内に柔軟なアクションを起こさせることは難しい。

実際に、知財が中心になり

社内の種々の部門を一つにさせることは、

手法的にも、人材的にも困難であろう。



そもそも知財という、とっつきにくい概念を中心に据えてしまうと、

ビジネスのプロセスとして、誰が、いつ、何を、どのようにするのか、

というアクション志向での議論を開始しにくい。



知財業界人が思っているほど、部外の人間は、知財を中心には

持ってきたがらないし、持ってきたとしても、

「知財の問題なんだから、知財部がやってよね」

という他人任せの潜在意識があり、

事は一筋縄ではいかない。


そう、この他人任せの現況が、

「知財」という衣をかぶった実体によりもたらされていることを、

知財人は、もっと認識すべきであろう。


集まった人間の中で、知財の知識も経験も豊富なのは、

知財人だ。

だが、ビジネスを作り出そうとする場では、

それは、心の奥底に閉まっておこう。

・・・・・・・・・

ビジネス開発には、製品・サービスのビジョンが必要である。

そのビジョン如何によっては、製品・サービスのスペックや、

対象とする顧客が異なってくる。

当然、そのための社内外のプロセスも柔軟に対応させる必要がある。



そこにおいて、知財や技術は、点にすぎない。

点と点を結んで線とし、

線と線を結んで面とすることでビジネスの構成が成り立ってゆく。

その中で点である知財や技術は、場合によっては

他の点で取って代わられる物でありうる。


このようなプロセスにおいて、

知財を知財として意識せずに、

議論をスムーズに行わせるためには、

自身の専門分野での物事を編集して、

部外者に取り扱いやすい形体で提供する必要があることは、

賢明な読者ならば自明なことであるとわかるであろう。

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Wikipedia:ビジネスプロセスモデリング より抜粋
ビジネスプロセスは特定の顧客のため、特定のサービスまたはプロダクト(特定化された目標)を創り出すために関係づけられ、構造化されたアクティビティまたはタスクの集合である。ビジネスプロセスはそれら自身の属性を持つ、複数のサブプロセスに分割できるが、しかしスーパープロセスの目標を達成するため貢献する。

プロダクトやサービスを提供するビジネスのプロセスにおいて、

技術だの、知財だのは、直接的には語られていない。


さあ、どうする、知財人。


自らビジネスプロセスの中に飛び込める人材になるか、

既存の伝統的な特許出願の業務として、

ビジネスのプロセスから外れた領域で、

しこしこと仕事する人間になるか。

両者を分けるポイントは、

ビジネスのモデリングを行う力であると私は考えます。

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