先日、「モデル」というタイトルで
技術の活用における不確実性や、
マーケットへの対応への不透明性という観点から、
議論のためのモデルという概念について書きました。
本日はもう少し具体的に。
世の中、多くの人は専門性があることを良しとする風潮があります。
しかし、これを客観的に見た場合に、
相手に丸投げできるかどうか?
という視点で人間を見ているに過ぎないと私は考えます。
ビジネスを作り上げるという点においては、はたして専門家と言える
人間はいるのでしょうか?
右肩上がりの経済では、他に追随していくだけで、
売上を伸ばすことは難しくはなかったかもしれません。
ですが、新規のビジネスの根底には起業家精神が必要なはずです。
ビジネスの活動をモデリングするということは、
専門家に任せるのではなく、自ら築き上げていく際に、
思考の助けになるのみならず、
他の者との協働に影響を与えるものなのです。
他の者との協働において問題となるのが、
「視点の違い」
です。
例えば、
「電子回路作成技術」
と聞くと、大抵は、
「電子回路を作成する技術」
と捉えるはずです。
これは、以前、デジタルとアナログのInputとOutput(2)において
動詞+目的語
で意味空間として物事を把握するとよい、ということに対応しています。
確かにその通りなのですが、
・基板に素子を接続すること
と捉えることも、
・基板上の回路に新たな電気特性を付与すること
と捉えることも可能なのです。
このように、一つの物事をもってしても、その捉え方は唯一ではなく、
とうぜん、物事の初期段階の捉え方の違いが、
その後の活動を大きく左右することはご理解いただけるでしょう。
だからこそ、捉えた対象物を、
特定の技術分野の知識を駆使して表現するのではなく、
システムとしてのビジネスをモデリングにより表現し、
これを関係者間で共有することが必要なのです。
上記で構造的な捉え方をする場合には、
当然、物を生産すること中心に据えており、
その機能については、
付随的、外部から提供されるべきものと捉えていることが多いでしょう。
一方、機能的な捉え方をする場合には、
物を実際に生産する行為自体よりも、バリューチェーンの中での
自社の特徴を把握しようとしているともいえます。
表現の違いに、その表現した者の把握の背景が現れていて、
その背景が、他の者の把握の仕方に影響するのです。
特許実務におけるクレームの解釈についての知識は、
審査や訴訟においては必須のものでしょうが、
その知識は、技術をビジネスにつなげていく際には、
障害となりえるものだと思います。
知財人が
発明の創出⇒発明の保護⇒発明の活用
といった流れで、発明や特許という概念を中心に据えていることは、
物事の捉え方に硬直性を与えてしまう原因の一つ
であることが多いようです。
近年、知財コンサルティングを標榜する特許事務所が増えている感が
ありますが、果して、彼らのモデリング能力はどれほどのものでしょうか?
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