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2013年2月27日水曜日

ADLから出されたGlobal Innovation Excellence Survey

技術経営支援やイノベーション・マネージメントでよく知られるArthur D. Littleより


という報告者が出されています。

2010年以降、イノベーションのパフォーマンスは低下傾向にあるものの、

イノベーションのマネージメントと、パフォーマンスとの間には、

強い相関関係があるとのことです。

イノベーションのパフォーマンスを構成する要素としては、

・the rate of new product/service introduction
(新製品・新サービスの導入率)

・contribution to EBIT margins,
収益性指標への貢献度)

・time to break-even
(ブレーク・イーブン(損益分岐点)までの到達期間)

等が挙げられています。



レポート中で、(私的に)もっとも注目すべき点としては、

「Capability in Innovation (イノベーション実行能力)の把握と、

イノベーション成功率との間には、

強い相関関係が認められた」

ということではないかと思います。


レポートの中でも引用されていますが、ドラッカーがかつて述べた

“If you can't measure it, you can't manage it.”

という言葉が、とても身にしみる内容ではないでしょうか?

2013年2月20日水曜日

デザイン思考のススメ(技術者向け)


「デザイン思考を学ぶ理由:科学者とデザイナーの違い」 では、


科学者は現在を見るのに対して、

デザイナーは未来のものを現実とする

という違いがあることを述べました。

したがって、科学者や技術者がその成果をもとに

ビジネスをデザインするには、行動規範を大きく変える必要があることを説きました。



デザイン思考と、ソフトシステムズ思考との関連性、類似性について述べました。

そして、


技術者は、不確実な対象や主観を取り扱うことが苦手であると説きました。



技術者が一歩前へと踏み出すには、やはりサポートが必要であることを述べました。



デザイン思考を学ぶための無料教材が用意されています。

興味を持たれた方は、ぜひ、ご利用されてみてはいかがでしょうか?


また、本サイトの記事へのご感想もお聞かせいただければ幸いです。

2013年2月19日火曜日

技術者はイノベーションを起こせるか?

この投稿で問題としているのは、イノベーション(Innovation)であって

インベンション(Invention:発明)ではありません。



日本語では、イノベーションを「技術革新」と訳すことが大半なので、

日ごろ発明に携わる技術者ならば

ごく自然にイノベーションを起こせると考えてしまいがちです。

また、技術者以外の方々も、技術者に対して、そのような期待を持ってしまいがちです。



はたしてそうなのでしょうか?



「技術者が、このように行動を起こせば、イノベーションは必ずうまくいく」

といった成功のための処方箋は存在しないと思いますが、

逆にうまくいかない理由は、ある程度はっきりしていると思います。



技術者がイノベーションをうまく起こせない理由、

それは、マインド、考え方、思考様式等に起因したものではないかと

私は考えています。


技術至上主義、分析志向(要素還元主義)、論理思考

に原因があるという言い方も可能でしょう。


これらはいずれも、マーケットとの対話、組織内の他部門との対話や、

顧客のニーズとの対話といった、

人との接点における行動を排除する思考様式に陥りやすいものばかりです。



ビジネスを構成する様々な部門には、様々な暗黙知が存在しています。

そういった暗黙知を持ち寄って、形式知化するための方法論について、

技術者は継続して学んでいく必要があるのではないでしょうか。

2013年2月15日金曜日

デザイン思考の源流

「イノベーション」という表現が、バズワード(Buzzword)として用いられていると指摘する人もおり、

あえて使わないようにしている人たちもいるぐらいです。

おそらく、近い将来、「デザイン思考」という言葉も、

マスコミで頻繁に扱われるようになってくるものと思います。


デジタル世界において、自らのアウトプットに対して注目を浴びる観点からは、

SEOのためにバズワード化すること自体は避けようのないことかもしれませんが、

やはり、真にイノベーション活動に関わる人間となろうとする者ならば、

言葉についての正確な把握や理解をしておくことは、必要且つ本質的なことだと思います。



「デザイン思考」のプロセスを、

「単に、こうやってやるものと教わった」

というレベルでとらえている限りは理解できませんが、

問題解決のための方法論や、クリエイティブな手法全般について

包括的に学んでいれば、「デザイン思考」と「ソフトシステムズ論(SSM)」との間に

関係性や類似性があることに気づくのは、そう難しいことではありません。

少なくとも、SSMを学んで、一定レベルで身に着けている者であれば、

「デザイン思考」の考え方を、違和感なく、ごく自然に習得できるはずです。


英語版のウィキペディアには、

「デザイン思考」が、SSMから派生したとの記載があります。


Many of the early Design Processes stemmed from Soft Systems Methodology in the 1960s. Koberg and Bagnall's wrote The All New Universal Traveller in 1972 and showcase a circular seven-step process to problem-solving; although they also proposed that these seven steps could be done lineally or in feed-back loops.[23] Stanford's D. School came up with an updated seven step process in 2007.[24]

ウィキペディアにおいては、「デザイン思考」の項目自体が、

日本語版にはありません(この投稿時)。

デザイン思考についての良質な情報源は、現時点では英語がもっともよいと思います。


2013年2月12日火曜日

デザイン思考を学ぶ理由:科学者とデザイナーの違い:


Wikipediaの"Design Thinking"の項目にこんな一節があります。


The main point of difference is that of timing. Both artists and scientists operate on the physical world as it exists in the present (whether it is real or symbolic), while mathematicians operate on abstract relationships that are independent of historical time. Designers, on the other hand, are forever bound to treat as real that which exists only in an imagined future and have to specify ways in which the foreseen thing can be made to exist.[29]



「科学者は、物理的な世界、即ち、モノや記号が現存する世界において、物事を実行する。



一方、デザイナーは、想像上の未来においてのみ存在するモノに拘束され、


それをどのようにして実存のモノとできるかについての方法を示す必要がある。」




対象物については、科学者とデザイナーとではアプローチの仕方が大きく異なる訳です。



当然のことながら、技術者がビジネスを何らかの形でプロデュースする場合には、


科学の世界での行動規範とは異なるものにそって、行動することが求められる訳です。



そのような行動の規範となるものは、科学的な合理主義とは異なっています。


にも関わらず、技術者を含めて行われる事業開発の検討では、


このことを理解していない技術者の態度により、しばしば検討会が紛糾してしまうのです。



2013年2月8日金曜日

イノベーションを台無しにする言葉

新規事業や新たなマーケットの開拓をする責任者が、

こんな言葉を発しているのを見たことがないでしょうか?


1.これじゃ、うまくいかないな。以前、似たようなことを試したが、駄目だった。


相手のためを思って言っているようにも見えますが、

自分の方が経験値が上だと言っているようにしか聞こえません。

以前とは異なる、新たな「組み合わせ」でやろうとしていることを、

本当に理解した上での発言でしょうか?

そして、失敗することを絶対悪だと考えていないでしょうか?


2.いいとは思うけど、売れるの?


そもそも、新しいマーケットを作ろうってことじゃないんですかね?

試してみないことには分からないこともあるはずです。


3.君には、これは無理だよ。


だったら、なんでチーム全体で助けてやろうとしないの?


4.これは、うちの会社がやるべきことじゃないよ。


だから、既存事業でなくて、新規事業なわけでしょ?

私には、ちゃぶ台をひっくり返す、星一徹のようにしか見えません。

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日本の組織では、イノベータのやる気を削ぎ、

時代遅れの価値観を押しつけてしまっていることがあるのではないでしょうか?

これらの内容は、こちらのブログからの抜粋(+私の解釈)ですが、

組織の中でいかなる文化や環境を作り出していくかについては、

責任ある人は、真摯に学んでいく必要があると思います。



2013年2月7日木曜日

探索学習

「探索学習」

という言葉になじみがないという方はおそらく、

「何が問題であるのか」が明確な状況に

身をおいて仕事をしている方である可能性が非常に高いです。



探索学習とは、

SSM(ソフトシステムズ論)という方法論において出てくる基本的な考え方なのですが、

ニーズが明確であり、その対応を考えることが要求される従来の方法論ではなく、

そもそもニーズについても、その対応についても明確ではない、

混沌とした状況

に対応するための方法論における重要なステップを表す言葉のことです。


ちなみに、探索学習の反対語は、

「専門家への丸投げ」

です。







2013年2月6日水曜日

技術者と特許の知識

特許の知識と聞くと、

皆さんはどのような内容をイメージするでしょうか?

特許法の知識、明細書の書き方、出願の仕方、権利のとり方、権利行使の仕方など。

特許の業界人は、おそらくこのようなことをまずイメージするのではないでしょうか?


ですが技術者の視点でみると、

(正直なところ)

「そんなもの、どうでもよい。」

というのが本音です。


「だって、そういう知識は、特許事務所や弁理士の仕事に必要なものじゃないの?」

「なのに、なんで技術者が肩代わりしてそういう知識を持つ必要があるの?」

と思っている方は、実はかなり多いのです。



仕事上、技術者も知財に興味をもって積極的にかかわるよう、

会社の上司に言われているから、

仕方なく対応しているという人によく接します。



そのような実態が存在するにもかかわらず、

技術者向けの特許セミナーの内容といえば、

単なる手続きの話であったりすることが多いわけです。



また、企業の知財部門の発案で、

技術者向けに

「明細書の書き方や読み方」

と題して、文言解釈上、必要になる知識を詰め込むようなセミナーも見受けられます。



このようなセミナーは、知財部の人間が有益と感じる限りにおいては、

いいセミナーとして評価されているものなのですが、

技術者側の視点では、そのようなセミナーは、

本来、知財部や特許事務所側が負うべき仕事の一部を

技術者側に丸投げされていると感じるものなのです。



もちろん、特許の仕事にかかわることで技術者側にも、

そして、彼(女)らを雇う事業会社側にもメリットはあるものです。


しかしながら、そのようなメリットを十分に引き出せるようなセミナーを実行している

特許業界の組織はあまり多くはありません。


このような問題の根底には、

多くのセミナーが提供側の将来的(比較的短期のもの)なメリットを

考えての上での近視眼的な提供に終わっていて、

イノベーション全体を俯瞰した上でのサービスの最適化が行われていない

からだと私は考えています。


もちろん、サービスの提供を受ける側の体制やマインドの問題もあるのは事実です。


知財部門と特許事務所との信頼関係の構築や維持なることすべてが、

技術者の本来の研究開発や、事業化による事業会社側への

貢献につながるわけではないということを、

折に触れて意識していくのは、非常に重要なことであると思います。







(知財専門家が教えない)特許のホントの話


2年程前に他のブログサイトで投稿して非常に反響のあったポストを再掲いたします。
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(知財専門家が教えない)特許のホントの話


この2、3年で知財経営だとか、知的資産経営とかということを語る人が知財業界でかなり増えた。
このような状況の中、米国の個人発明家の書いた1冊の書籍が米国で波紋を呼んでいる。
タイトルがいかにも挑発的である。

直訳すると、

「特許出願なんかしてはいけない」

というもの。

このタイトルを見て、また著者が個人発明家であることを見て、おそらく日本の大半の弁理士はそっぽを向くであろう。
もちろんタイトルはあくまでもキャッチコピー且つ著者の考えにすぎない。

しかし、その内容には知財関係者が気にかけることはないであろう、多くの大切な視点が示されているので私なりの解釈を含めて、簡単に紹介してみたい。

普段、大企業の知財担当者を相手にすることが多く、更に、今後は中小企業を対象とした知財コンサルを行いたいと思っている方には非常に参考になる書籍である。

1.普段専権業務の特許出願をされている弁理士の方は、顧客が出願する領域の許可率を意識したことがあるのだろうか?

著者はこの点をまず指摘している。

個人発明家にとっては、出願にかかる費用はかなりの金額であり、出願してみたものの特許になるのかどうかは、非常に大切なこと。しかし、代理する側としては、そのようなことを気にかけて仕事をされている方は多くないであろう。正直なところ出願してみないとわからないというのが現実のことが多い。だが個人発明家の視点では、登録率の低い分野ならば、最初から教えてほしかったというのが正直なところである。低いなら低いなりに覚悟がいるであろうし、どこまでやりとおすのかを予め決めておくこともできよう。

しかしそのようなことをアドバイスしてくれる弁理士などいないのが米国の実情。


2.個人発明家にとっては、拒絶理由の内容は理不尽極まりない(特に進歩性、非自明性欠如の拒絶)。

代理人であるはずの弁理士は、特許庁側の視点には詳しいが、専門知識を持たない発明家の視点には疎い。本来、出願人にとっての代理人であるはずが、特許庁側の立場を説明をするに終始してしまい、どちらの代理人なのかがわからなくなってしまう。その結果、個人発明家には費用のみならず、特許出願は時間と労力といった貴重なリソースを非常に消耗させるものとなってしまっている。

弁理士の専門知識として、特許庁がどのように拒絶するのかを理解することは非常に重要なことはいうまでもない。しかし、それを個人発明家の視点で十分理解できるように翻訳し、解決策を引き出す能力ということに関しては、考えたことはあるのであろうか? 


3.中小企業や個人発明家は、特許出願’(し、権利取得)することを、彼らの最大の目的とはしていない。

大企業の知財部が特許事務所に出願を依頼する場合には、出願が目的となっているから問題はなかろう。だが中小企業や個人発明家は、他にすることが山ほどあるのだ。そんな彼らに何をどのように提供すれば負担が軽く、効率的なサービスを提供できるのかを是非考えてほしい。


4. なんで、審査にこんな時間がかかるんだ?

まぁ、これは代理人だけの問題ではない。しかし、ビジネスでは時間との勝負であることも多い。この点は、出願依頼を受けるときにアドバイス位はしてほしい。


5.で、結局、いくらかかるんだ?

拒絶理由に次ぐ拒絶理由。勘弁してくれ。ビジネスには予算ってものがあるだろう。


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サービス提供者として、普段、ここまでの苦情を聞くことはそう多くはないと思われます
(書籍内ではもっと辛辣に批判されています)。

怒らずに、たまには真摯に聞いてみるのもいいのではないでしょうか。

この書籍では、これらのことはあくまでも序章にすぎません。個人発明家がビジネスを遂行するための様々な注意点が記載されています。本書の後半部分は、起業のための参考書といえる内容でです。起業家精神に乏しいと思われる方にはとくに有益と思われます。

その中で、知財関係者には特に興味を引かれるであろう内容もあります。

米国で侵害訴訟を起こしたらどうなるのか?

これについては、金銭面を含め、裁判所や弁護士との関係等、普段耳にすることがない情報が赤裸々に記載されています。

このような経験を通じて、著者は、

「特許出願なんかしてはいけない」

という結論に達しています。

タイトルを読んだときには反感を感じていたであろう方も、この説明を読んでどのように印象が変わったでしょうか?

弁理士なら、特許を取得することの大切さ、取得しないことのリスクについては良く理解されているでしょう。
しかしそのような理解と、プライドは一旦置いておき、個人発明家の視点というものを是非理解してみることは、以後のサービス提供に大きな影響を与えるのではないでしょうか。

専門性へのプライドは、一歩、引いてみれば、周りが見えない、単なる専門バカでもあるはず。中小企業、個人発明家相手へのサービス提供は、思っている以上に敷居が高いかもしれません。



以上、米国での話ですが、これを読まれた日本の知財関係者の皆さんはどのように感じられたでしょうか?