ページビューの合計

2015年4月7日火曜日

モデリング、知財、新規事業、ビジネス開発

2011年から始めて細々と継続しているこのブログでは、

これまでに幾度となく「モデル」について語ってきた。

新規事業開発において「モデル」という概念が持つ重要性については、

年を追うごとにしみじみと感じる。


しかし悲しいかな、知財と関わる仕事をしていると、

その重要性というものがうまく理解されていないと感じるのことがよくあるのも事実である。


知財関係者がモデルに興味をあまり示さない実情について書いたのがこちらの記事


以前、とある弁理士が自虐的に、

「弁理士を語る際に、弁理士は知財という属性を最上位に持ってきたがる」

と語っていたことがあったが、

彼は、自身のおかれている状況から抜け出して、

物事をより客観的に把握できる方という印象があった。

このような態度は、ビジネス開発においては非常に役立つものだ。

ある意味、自己否定をすることが、新規事業開発には必要だ。

自分の存在をも評価対象として客観視するという姿勢は、

ビジネス開発、ビジネスモデリングにも大きく役立つ技量のはずである。


そこで出てくるのが、操作対象としての「モデル」という概念だ。


モデルに対する操作を繰り返し、漸進的に進めていく

「イノベーションのシンプルモデル」を提唱したのがこちらの記事

2015年3月25日水曜日

ビジネス開発に必要な技術者の行動様式とは?

技術者の通常の行動様式は、問題解決型であるといえるでしょう。

この行動様式は、分析や論理を基本としています。

つまり、帰納的な方法論や演繹的な方法論を使って、

より確実な、信頼性のある結果を得ることを特徴としています。

たとえば帰納的な方法において技術者は、

Aという現象が見られた場合に、

「BならばAが生じる」

という規則におけるBを見出すことを行います。

そのため、「BならばAが生じる」という論理的な枠組みの中で活動を行うことになるのです。

このような行動様式をとる場合、自ずと既存の枠組みの中での活動に集中するため、

部分最適化的な結果となりやすい傾向があります。

問題・現象が所与であり、自ら作り出すものではないことが大きく影響しているからです。


これに対してビジネス開発では、問題の定義の仕方も事象の捉え方も様々です。

問題については自ら定義することも可能なのです。

そのため、問題解決の際に有効であるはずのアルゴリズムのみでは、事に対処できないのです。

物事の捉え方や、行動の起こし方に関しては、発想が重要となるのです。

行動様式としては、デザイン型のものが要求されるのです。

技術者がビジネスに関わる際には、デザイナーのとる行動様式を身につける必要があるのです。

直観にたよる部分が増えるわけです。

恣意的な仮説を数多く作り出す必要があります。

このような行動様式をとる場合、多くの技術者は、行っていることに憤慨したり、

自己嫌悪に陥ったり、みずから責任を放棄する行動をとってしまいがちです。



しかし、問題解決型とデザイン型とを対比することで、

技術者は行動様式を自らポジショニングすることが可能になり、

ビジネスの創出に適切に対応することができるようになるものです。

企業のCTOや、事業責任者の方々は、人材開発において、このようなことを意識して

技術者の教育、啓蒙を行っていくことが今後は重要となっていくでしょう。






2015年3月13日金曜日

技術者のアタマの硬さと、デザイン思考の柔らかさ

技術者の存在意義はどこにあると皆さんはお考えでしょうか?

次の2点は多くの人が捉えている内容であろうと私は思います。

1.客観性論理性をもって事に対処する

2.専門性に支持された確固たる知識を持っている


このような捉え方をした場合、その裏には次のような考え方が潜んでいるはずです。

「技術者にとって問題解決の際に邪魔をするのは、主観 だ」


言い換えると、主観を排除することで客観が得られる、と考えている人が多いのではないでしょうか


このような考え方を持った人たち(技術者やその周囲の人たち)がプロジェクトを行おうとした場合、

次のような事態に陥ることが多いものです。

A.有識者の見解を知ることは重要だ(専門知識を活用しよう)

B.専門家に依頼してみよう

C.専門家が専門家の視点で検討したことならば確実だ

D.専門家のアドバイスに従ったのだから、間違いはないはずだ

E.専門家を活用することも、彼らの検討結果を利用することも、すでに意思決定したことであり、いまさら否定はできない

A~Cの流れは、良く言えば「委託」ですが、悪く言うと「丸投げ」です。

そしてC~Eの流れは、独自基準での評価を行わない怠慢と、前例主義の弊害です。



これに対してデザイン思考の源流にあるソフトシステムズ論(SSM)では、

A~Cに関して、Dynamicな視点、Softな視点で、

状況についてのRich Pictureを得ることを、その第一段階にしています。

この第一段階では、主観を排除していません。

つまり、専門知識に依存することはしていないのです。


技術者の持つ専門性は、効率よく、且つ、確実な結果をもたらすための必須の要素ですが、

プロジェクトの早い段階で主観を排除してしまうという問題があるのです。

つまり、様々な可能性というものを早い段階で排除してしまう恐れがあるのです。


技術者の皆さんは、自社、自分のプロジェクトの製品やサービスの「ユーザー観察」を行ったことがあるでしょうか?

ユーザー観察の対象はユーザーであって、制作側の皆さんの考えとは必ずしも一致しない考えや行動様式をもっているものです。

技術者の皆さんは、「プロトタイプ」をすぐに作ることを躊躇していませんか?

考える前に手を動かし、モノを作ることでしか見えてこない事柄もあるものです。

(客観性を重視する)頭の硬さは、技術者にとっての必須要素であるとも言えますが、

開発では、行動様式、思考様式を変えて、アタマを柔らかくすることも時には必要です。




2015年3月6日金曜日

コンサルティングと手法

コンサルティングを行う際には、何らかの確立された手法を活用することが多いと思います。

当然のことながら、コンサルタントは利用する手法について熟知していることが必要です。

しかしながら、あまりにもそのことを前面に押し出して依頼者と接触すると

一つの問題を生じさせてしまうものです。

それは、

小手先感

ではないでしょうか?

つまり、使い方はよくわかっているので、その点については信用できるのだけど、

「この人(コンサルタント)は、われわれの事業にどこまで入り込んで検討してくれているのだろうか?」

という疑念を生じさせてしまうのです。


このブログでたびたび取り上げているデザイン思考も、

近年では各種セミナーが実施されるようになり、新規ビジネスを起こそうとする方たちには

注目される手法になってきたと感じます。

ですが、デザイン思考における手法は、いざ実際に使おうとすると、

一般の方たちにはまだまだ複雑に感じるもののようです。

複雑に感じたり、小手先感を感じたりするのは、じつは

手を動かしていない

ことが理由です。

デザイン思考では、言うよりも、まず行動することが大切であり、

考えて話そうとするから、複雑性や小手先感に惑わされるのです。


デザイン思考を使う場合には、コンサルティングと呼ぶのは、少々問題だと私は思っています。

それはコンサルティングでは依頼者がレポートのようなもの、すなわち検討が完了して、

確証のある結果を求めていることがほとんどですが、

デザイン思考では一緒に悩んで漸進していくことが、その仕事内容となるものであり、

コンサルティングにおいて依頼者が期待している形態で結果をだすことはないからです。

むしろ、依頼者にも問題を突きつける、という作業が仕事となるので、

コンサルティングを標榜して仕事の受注を行うことには無理があると思います。








2015年2月27日金曜日

特許ブローカーから見た価値ある特許の条件

2015年2月に流れてきた情報の中で個人的に最も目を引いたトピックです。

こちらの記事(What Makes a Patent Valuable-A Patent Broker's Perspective by Louis Carbonneau, CEO)からの情報ですが、抜粋してみます。


最近、2、3年の間、一特許当たり価値は幾分低下したが(Nortel社特許の売買によるバブルのため)、特許取引市場自体は確固たる基盤として存在している。

価値判断には様々な考え方があり、時代とともに変化するものであるが、特許ポートフォリオを構築しようとしている、特許の買い手との取引から見えてくる条件がある。

それは、「権利侵害を避けるために、その権利を買う必要があるか否かによって購入するかどうかが決まる」ということだ。

また、「いわゆるパテント・トロール(NPE)に買われてしまうおそれがあるから」という理由もある。


価値ある特許(クレーム)の書き方の具体的な要素、注意すべき点としては次のことが挙げられる:

(1)守りではなく攻めのための書き方をすること、更に具体的には今後15年間ぐらいの間に競合者が実施したいか、避けようとするような内容にすること、逆にいうと、発明した内容を丁寧にまとめ上げるようなやり方は、時間の無駄であるということ、

(2)特許ファミリーを構築すること、具体的には侵害訴訟で勝ち得る金額が大きい米国の特許を重要視すること、更に具体的にはCIP等の継続性出願を積極的に活用すること、即ち出願が許可されたからといって喜ぶのではなく、継続性出願を行えるかどうかの検討を行うこと、

(3)範囲の広いクレームは不利である、すなわち具体的な製品や製法などに特化した内容とすること(広いクレームは無効化のリスクが大きい)、ただし、狭いクレームといっても特許性に重要となる要素による限定にすること、

(4)先行技術調査をしっかりと行うこと、すなわち出願にコストがかかるからといって、拒絶や無効化される可能性を排除するための調査にかかるコストを削減しないこと、

(5)実施化の努力は怠らないこと、アイデアだけでもうけようとする姿勢は価値評価の際にマイナスとなるということ、

(6)侵害の立証がしやすい内容とすること。

-----------------------------------------------------------------------

この内容を読んでどのような感想をお持ちでしょうか?

「こんなことぐらい、俺は前から知ってるよ」ですって?

世間では、それを「後出しジャンケン」と呼んでいます。




2015年2月26日木曜日

技術者がビジネス開発で注意すべき点

ビジネス開発においては主観を的確に取り扱うPhaseが存在することを前回の投稿で指摘しました。

今回は、主観が的確に取り扱われていることを判断するには、どのような確認行動が必要かについてまとめたいと思います。

私が通常行っている方法は、大きく分けて

1.一つの主観に囚われない(即ち、多様な主観を引き出す)

2.引き出した主観(知識や経験)を構造化する(即ち整理する)

ということです。

このように表現してしまうと、行っていることはいずれも非常に当たり前すぎるので、これを読んでも関心されないと思います。

しかしながら、当たり前のことを愚直に実行するということは、ビジネス開発の方法論では非常に重要だと私は考えています。

なぜなら、方法論自体がシンプルで分かりやすいものの場合、新たなアイデアを生み出す行動に制約がかけられることなく、参加者が全力を注げる環境を作り出せるからです。

つまり方法論が複雑であると自ずとそちらに気を足られてしまい、次の段階で行う発想という行動に悪影響を与えてしまうからです。

技術者に特に注意が必要なのは、この段階では大まかに整理することで当面は十分であるということを理解することです。

技術者というのは、対象の物事をより深く理解しようとする性質を持っています。

そのため、物事の整理を始めると、必要以上に精力を注いでしまうという問題点があるものです。


このPhaseは、あくまでも発想を行う次の段階の準備段階と心得て、

「大まかに整理しておけば十分」

と考えるようにしたいものです。

ただし、やみくもに整理するだけでは不十分です。

引き出した(多様な)主観の対応関係、重要性、背景などを整理することで、

「ビジネス開発を行う意味」

を引き出せるような状態にすることが必要です。

このことが、次の段階の発想に好影響を与えるのです。



2015年2月25日水曜日

技術者がハマる、ビジネス開発における3つの落とし穴


1.リニア志向


「良い技術を開発すれば、必ずよい製品ができる」と信じている技術者はいまだに多いようです。

しかしながら今から30年も前に、

「イノベーションはリニアなプロセスではない」

ということが分かっています。


2.NIH症候群

NIHとは、米国の研究機関の事ではありません。

Not Invented Here

の略であり、外部リソースを利用することを嫌う企業文化のようなものです。

自己リソースにこだわりを持つため、ユーザーに好適なソリューションの構築を阻害するものといえます。


3.要素還元(論理実証)主義

客観的であることはすべてにおける善であると技術者は考えがちです。

ビジネスにおいては、ユーザーの主観を的確にとらえることも非常に重要です。

主観と客観、どちらがよいのかという問題ではなく、

主観を的確にとらえるPhaseがビジネスには存在するということなのです。

ビジネス開発Processにおいて客観性が大切なPhaseも勿論あります。

要は、開発におけるどのPhaseにいるのか、そのPhaseではどのような行動・思考様式が望ましいのかという判断が必要なのです。


2015年2月23日月曜日

技術者の視点と市場の視点

産学連携の関係者には知られていることですが、

技術の事業化の方法としては、

「技術プッシュ」よりも「マーケットプル」のほうが事業化成功率が高いといわれています。

「技術プッシュ」とは、技術シーズを市場ニーズにマッチングさせる方法であり、

「マーケットプル」とは、市場ニーズにあった技術シーズを引っ張ってくる方法です。


この知見は何ら目新しいものではなく、

古くは、あの発明王エジソンが言っていたこととも共通点を有するものです。

"I find out what the world needs. 
 Then I go ahead and try to invent it."

また、現代のマーケティング専門家であるセオドア・レビットも同様のことを述べています。

"People don't want to buy a quarter-inch drill. They want a quarter-inch hole!"

(消費者が欲しいのはドリルではなくて、穴だ!)

技術シーズをドリルに、マーケットニーズを穴にたとえているわけです。


これらの発言は、いずれも技術者にとって「理解」できるものですが、

だからこそ、逆に技術者の「行動」様式を変化させるのには弱いものではないでしょうか。


理解と行動との関係をつなぐには、ヒラメキが非常に重要です。

論理的な判断や行動を起こすことに価値を見出す技術者も、

もちろんヒラメキを利用していることに疑いはないはずです。

しかし、このヒラメキを利用するということに関しては、

あまり多くのことが語られていないのも事実です。







2015年1月21日水曜日

デザイン思考の目的


"The goal is not to develop a solution, but rather to develop a series of repeated actions that are continually tested to refine and adjust results."

[デザイン思考は] 問題解決することが目的ではなく、

繰り返し検証にかけて結果を改善するよう、行動を反復することが目的である。



結果を急ぎすぎると、自分のプロジェクトや自社の事業にとっての可能性を

狭めてしまうということは、よく見られる現象ではないでしょうか?

行動を起こし、それを「検証にかける」ことで、行動を起こす前には持てなかった

視点や知識、物事の関係性を理解したり、新たに生み出すことが可能になります。


そもそも、最初に提示された問題は、本当に解決すべきものなのでしょうか?

問題解決とか、戦略的とか、トップダウンの仕事といえば聞こえが良いかもしれませんが、

誰の視点での問題解決なのかを、まず考えてみることは非常に大切です。


「デザイン思考」という方法論は、

表層的にはフローに沿って行動を起こせば実行できるようになっていることは事実です。

しかし、方法論の根底の思想や哲学を理解することは、

イノベーションを起こすためには不可欠であると思います。

では、どのようにすればそのように深い理解を得ることができるのでしょうか?

逆説的ですが、デザイン思考的な観点からは、深く考える前に、

まず実行してプロトタイピングしてみることが大切です。

当然ならが、失敗を許容する文化が必要です。

密なコミュニケーションも必要でしょう。

進」よりも、「」を意識するのが、ポイントであると思います。







2015年1月19日月曜日

Innovationに関しての名言

イノベーションや事業化を専門とする、海外のコンサルタントやアナリストたちのつぶやきや

ブログの中から有益な言葉を幾つか抜粋してみました。


"Failures are just a part in the innovation process."
(失敗することは、イノベーションのプロセスの一部である)

有能な人間だけを集めてしまうと、何がうまくいくかが事前に分かってしまい、

失敗しても挑戦するという試みを行うことが難しいものです。

かつての中央研究所のような組織からはイノベーションが生まれにくいことと一致していますね。


"Experimenting is a critical innovation skill."
(試してみることは、イノベーションの重要なスキルだ)

知識は、ある意味、他人の成功体験のタダ乗りです。

自ら把握した状況に対応するための方策を、自ら作り出してみることが大切です。


"Algorithms are certified production processes. (Roger Martin)"
(アルゴリズムは、成果を生み出すことが証明された方法である)

試すことを躊躇するのは、成功する方法論を期待しているからです。

既存の事業を滞りなく進めることを任務とする人が、

「実績のあること」を重要視するのは理解できますが、

その考え方で新たな事業を進めていくのは無理があります。



このようにしてみると、失敗することを躊躇するのは、

後戻りできないという戦後の経済復興のころからのメンタリティが

いまだ日本人の中に存在してるからかもしれない気がします。

私の年齢は今、40代ですが、これまでの人生を振り返ると、

良い意味でも、悪い意味でも団塊世代の影響を受けざる得ない状況下で過ごしてきました。

お世話になった面もありますが、何か新しいことをしようとしたときに、

必ず障害となってきたのも彼らだったという思いがあります。

昭和の呪縛から解放されることが、日本のイノベーションには重要であると強く感じます。