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2013年5月16日木曜日

知財コンサルを格付けする!

個人的な興味や重要性が、知財から離れてデザイン思考に移ってきているのですが、

久しぶりに「知財コンサル」という切り口で少し考えてみました。



この業界は、特許事務所と知財関連業者の集合体から構成されていると思われますが、

GoogleでHPを検索した内容からは、裾野が広がった分、

レベルの高さには悪影響を与えてしまってきているな、という印象があります。

つまり、ありきたりの内容をカバーするのに、MOTで学んだ知識で着飾っている感じ

とでもいいましょうか、、、



この業界に参入したものの、収益化できない事業体が撤退していけば、

レベルが改善する可能性は、もちろんありますが、

そもそも、マーケットを的確に作り出しえていないという捉え方も可能ではないかと思います。



私が想定している知的財産・知的資産の経営コンサルティングとは、

従来からある、

------------------------
R&D成果----->特許出願
      ↑出願サービス
       におけるコンサル
------------------------
という捉え方ではなく


----------------------------------------------------------

アイデア----->ビジネスモデル/ビジネス戦略----->ビジネス

における、二つの矢印部分にどう対応するか? のサポート
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ということです。

つまり、コンサルの覆面をかぶった、専権業務の顧客拡大手段ではありません。



このような捉え方をもって業界のHPの内容を検討してみると、

知財コンサル業者は、だいたい次の3つのレベル分類されます。


レベル3(最低レベル)

「製品・サービスを差別化」とか、「知的財産権を活用した経営」というタイトルに、

その内容がもっともよく表れているサービスです。

製品やサービスを意識はしていますが、

大企業から流れ作業的に継続的に出願の仕事がやってくることがない中小の事務所が行う、

中小~中堅企業相手の出願代行サービスに過ぎません。

知財活動が実際に製品・サービスに結び付くかどうかは、依頼者側の体制しだいであり、

おそらくは出願完了した時点で実質的なサービスは終了です。

そのため、基本的には特許業界が行う、顧客層拡大キャンペーンのようなものです。



レベル2(直線型)

「効率的に知的財産を創造して、権利化していき、それを上手に活用する」

と掲げているところからは、レベル3よりも、「創造」部分に特徴があるものと推測されます。

しかし、「面」としてのビジネスを捉えきれていません。

知財という権利に特化しているといえば聞こえは良いかもしれませんが、

ビジネスのその他の面に目をつむっているに過ぎません。


ビジネスがうまくいきつつある企業が、知財部門の体制を整えたりするのには、

ある程度の効果はあると思われますが、レベル3のコンサルと同様に、

「知財をうまく構築していけばビジネスは自ずととうまくいく!」

と信じ切っているのでしょう。


手段が目的化している知財業界に長いこと居座ると、

どうしてもこのレベルのところに落ち着いてしまいます。

ビジネスがうまくいっている企業は、知財をうまく活用していることが多いかもしれませんが、

知財をうまく活用したからといって、ビジネスをうまく創出できるとは限りません。



このぬかるんだ泥沼から抜け出すには、

知財業界以外でのビジネスの経験が絶対に必要です。



レベル"1.99" 

レベル3⇒レベル2ときたから、次はレベル1だろうと思いでしょうか?

レベル2よりは上ですが、レベル1にまでは遠く及ばないということで、

レベルは、1.99です。

(レベル1>>>レベル1.99≒レベル2)

このレベルに属する事業体のHPには、

「多くの中小企業経営者は、知財の重要性に気付いていません。」

「自社に価値ある知的資産があることすら気付いていない経営者も多い。」

のような表現が見受けられますが、

言っている内容は、レベル3やレベル2のコンサルと同じです。



「企業経営者には、「知財ありきのアプローチ」では受け入れられず、

「経営からのアプローチ」が必須です。」


この部分には、基本的に賛同します。ですが、次のような記載には疑問を感じます。

「中小企業経営者を圧倒する知識体系を持つことが、

自信を持って対等に経営者と会話し、また信頼を勝ち得る第一歩になります。」


これはコンサルを行う側が仕事を受注するのに良い影響を与えるものは何かということであって、

顧客側がコンサルのサービスを受けて、ビジネスがうまく創出されることとは

本質的に関係がないことです。


生半可な知財戦略の知識さえあれば、ビジネスがみんなうまくいくのであれば、

コンサルなど行っていないで、自らビジネスをしたらよいではないでしょうか?




ビジネスを成功裏に収めるためには、

コンサルを受ける企業側が、的確に意思決定を行う必要があるわけで、

コンサルティングというよりも、むしろ、

カウンセリングといったほうが適切であると私は考えています。


(現実に「カウンセリング」で活動しようとすると

うまくいかないという点については、後日、改めて書こうと思います。)



結局どうすればいいのだ?


と思われるかもしれませんが、

本来、紋切り型のサービスでは、先が見えているというのが、

「知財コンサル」と呼ぼうとしているビジネスの本質的内容であると私は思います。

そしてこの質問に自ら答えを出せなければ、

知財「経営」などというのは、おかしいのではないかと思います。

2013年5月8日水曜日

デザイン思考における人間中心アプローチ

デザイン思考における重要且つ基本的な考え方に、

「人間中心」というものがあります。 参考


この人間中心という概念を短絡的に理解しようとすると、


「マーケティング調査を行い、市場のユーザからの意見聴取を行う」


といった行動をイメージすると思われます。


これに対して、かつてスティーブ・ジョブスのいたAppleの製品開発では、

市場調査は行われていなかったようです


表面的には、これらの二つの考え方は正反対のようにも思えます。


しかし、製品やサービスをデザインする初期段階で行っていることは、

次のような事柄のはずです。


1.ユーザが自覚していないので、当然、表出させてこないニーズを探ること

2.ユーザの意見と、実際の行動は必ずしも一致しないので、ユーザの想いや行動の深層を探ること

3.キライなものについては明確に述べることができるが、スキ!なことについては、明確に述べることは案外難しいので、それを探ること

4.必要であることと、欲しいということの区別も案外難しいので、注意すること


これらをひとまとめにすると、

「視点の適用の仕方を意識する」

というように理解することができます。

誰のどのような視点であるのかを意識し、

それを表出化することが、人間中心アプローチの核心なのです。



2013年3月29日金曜日

イノベーションを阻害する気質

貴方が、もし、確立されたもの、権威のあるものが好きである場合、

その気質を克服できないなら、

おそらくは、イノベーティブなことを成し遂げる確率は低くなると思われます。

それはなぜでしょう?



確立されたことを知らずのうちに求めている気質というのは、

権威あるものを含め、

「こうすれば、必ずこうなって、失敗しない!!」

ということを期待しているからです。



別の言い方をすると、アルゴリズムの存在を期待しているのです。



ここでの深層心理としては、

「自分はバカを見たくはない」

ということではないでしょうか?


逆説的ですが、イノベーションには、バカをみることが必要なのです。

成功するためのアルゴリズムは存在しません。

試行錯誤とか、探索学習という言葉で表現される行動をとることがどうしても必要なのです。


ですが、バカであり続けては、もちろんいけません。

バカをみて、うまくいくかどうかを見極めるということです。

そのために有効なことは、

ヒューリスティックスを使うことであると私は考えています。

あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、

仮説形成法とか、心的ショートカットと表現すれば分かりやすいかもしれません。



問題は、ヒューリスティックスは、必ずしも正解を与えないことです。

だからこそ、検証することが必要であり、

デザイン思考等の方法論では、

プロトタイピングを行ったあとの検証工程が重要となってくるのです。








2013年3月12日火曜日

デザイン思考を学ぶお値段

デザイン思考について真剣に学ぼうとする場合、

やはり、本家本元のd.schoolで学んでみようかと考えることになりますが、

最近、ダイレクトメールで私のところにも、案内状が届きました。



通常、マスターレベルでの留学などを考える人が多いですが、

ビジネスに10~15年携わっている人ならば、

Executive Programというものに参加して、Boot Campを手短に体験する機会があります。

とはいっても、英語ですし、授業料もかなりの高額です。



3日間の集中講座で、授業料は、9500ドルです。

やはり高等教育機関での講座なので、お値段もそれなりです。


「デザイン思考」という名前には、「思考」という言葉が使われていますが、

実際のところ、単なる、Design Thinkingではなく、

Design Doingであるという人もいるぐらいです。



デザイン思考では、実際に手を動かして、Prototypingを行ったりする必要性があり、

会議室で行われる通常の日本のセミナーとはかなり異なったものですが、

最近は、日本でもそのような趣旨で、実際に手を動かすセミナーが増え始めている兆しがありますね。

ですが、米国での教授陣からの実際の指導を受けられるという点については、

かなりの魅力あるものだと思います。




2013年2月27日水曜日

ADLから出されたGlobal Innovation Excellence Survey

技術経営支援やイノベーション・マネージメントでよく知られるArthur D. Littleより


という報告者が出されています。

2010年以降、イノベーションのパフォーマンスは低下傾向にあるものの、

イノベーションのマネージメントと、パフォーマンスとの間には、

強い相関関係があるとのことです。

イノベーションのパフォーマンスを構成する要素としては、

・the rate of new product/service introduction
(新製品・新サービスの導入率)

・contribution to EBIT margins,
収益性指標への貢献度)

・time to break-even
(ブレーク・イーブン(損益分岐点)までの到達期間)

等が挙げられています。



レポート中で、(私的に)もっとも注目すべき点としては、

「Capability in Innovation (イノベーション実行能力)の把握と、

イノベーション成功率との間には、

強い相関関係が認められた」

ということではないかと思います。


レポートの中でも引用されていますが、ドラッカーがかつて述べた

“If you can't measure it, you can't manage it.”

という言葉が、とても身にしみる内容ではないでしょうか?

2013年2月20日水曜日

デザイン思考のススメ(技術者向け)


「デザイン思考を学ぶ理由:科学者とデザイナーの違い」 では、


科学者は現在を見るのに対して、

デザイナーは未来のものを現実とする

という違いがあることを述べました。

したがって、科学者や技術者がその成果をもとに

ビジネスをデザインするには、行動規範を大きく変える必要があることを説きました。



デザイン思考と、ソフトシステムズ思考との関連性、類似性について述べました。

そして、


技術者は、不確実な対象や主観を取り扱うことが苦手であると説きました。



技術者が一歩前へと踏み出すには、やはりサポートが必要であることを述べました。



デザイン思考を学ぶための無料教材が用意されています。

興味を持たれた方は、ぜひ、ご利用されてみてはいかがでしょうか?


また、本サイトの記事へのご感想もお聞かせいただければ幸いです。

2013年2月19日火曜日

技術者はイノベーションを起こせるか?

この投稿で問題としているのは、イノベーション(Innovation)であって

インベンション(Invention:発明)ではありません。



日本語では、イノベーションを「技術革新」と訳すことが大半なので、

日ごろ発明に携わる技術者ならば

ごく自然にイノベーションを起こせると考えてしまいがちです。

また、技術者以外の方々も、技術者に対して、そのような期待を持ってしまいがちです。



はたしてそうなのでしょうか?



「技術者が、このように行動を起こせば、イノベーションは必ずうまくいく」

といった成功のための処方箋は存在しないと思いますが、

逆にうまくいかない理由は、ある程度はっきりしていると思います。



技術者がイノベーションをうまく起こせない理由、

それは、マインド、考え方、思考様式等に起因したものではないかと

私は考えています。


技術至上主義、分析志向(要素還元主義)、論理思考

に原因があるという言い方も可能でしょう。


これらはいずれも、マーケットとの対話、組織内の他部門との対話や、

顧客のニーズとの対話といった、

人との接点における行動を排除する思考様式に陥りやすいものばかりです。



ビジネスを構成する様々な部門には、様々な暗黙知が存在しています。

そういった暗黙知を持ち寄って、形式知化するための方法論について、

技術者は継続して学んでいく必要があるのではないでしょうか。

2013年2月15日金曜日

デザイン思考の源流

「イノベーション」という表現が、バズワード(Buzzword)として用いられていると指摘する人もおり、

あえて使わないようにしている人たちもいるぐらいです。

おそらく、近い将来、「デザイン思考」という言葉も、

マスコミで頻繁に扱われるようになってくるものと思います。


デジタル世界において、自らのアウトプットに対して注目を浴びる観点からは、

SEOのためにバズワード化すること自体は避けようのないことかもしれませんが、

やはり、真にイノベーション活動に関わる人間となろうとする者ならば、

言葉についての正確な把握や理解をしておくことは、必要且つ本質的なことだと思います。



「デザイン思考」のプロセスを、

「単に、こうやってやるものと教わった」

というレベルでとらえている限りは理解できませんが、

問題解決のための方法論や、クリエイティブな手法全般について

包括的に学んでいれば、「デザイン思考」と「ソフトシステムズ論(SSM)」との間に

関係性や類似性があることに気づくのは、そう難しいことではありません。

少なくとも、SSMを学んで、一定レベルで身に着けている者であれば、

「デザイン思考」の考え方を、違和感なく、ごく自然に習得できるはずです。


英語版のウィキペディアには、

「デザイン思考」が、SSMから派生したとの記載があります。


Many of the early Design Processes stemmed from Soft Systems Methodology in the 1960s. Koberg and Bagnall's wrote The All New Universal Traveller in 1972 and showcase a circular seven-step process to problem-solving; although they also proposed that these seven steps could be done lineally or in feed-back loops.[23] Stanford's D. School came up with an updated seven step process in 2007.[24]

ウィキペディアにおいては、「デザイン思考」の項目自体が、

日本語版にはありません(この投稿時)。

デザイン思考についての良質な情報源は、現時点では英語がもっともよいと思います。


2013年2月12日火曜日

デザイン思考を学ぶ理由:科学者とデザイナーの違い:


Wikipediaの"Design Thinking"の項目にこんな一節があります。


The main point of difference is that of timing. Both artists and scientists operate on the physical world as it exists in the present (whether it is real or symbolic), while mathematicians operate on abstract relationships that are independent of historical time. Designers, on the other hand, are forever bound to treat as real that which exists only in an imagined future and have to specify ways in which the foreseen thing can be made to exist.[29]



「科学者は、物理的な世界、即ち、モノや記号が現存する世界において、物事を実行する。



一方、デザイナーは、想像上の未来においてのみ存在するモノに拘束され、


それをどのようにして実存のモノとできるかについての方法を示す必要がある。」




対象物については、科学者とデザイナーとではアプローチの仕方が大きく異なる訳です。



当然のことながら、技術者がビジネスを何らかの形でプロデュースする場合には、


科学の世界での行動規範とは異なるものにそって、行動することが求められる訳です。



そのような行動の規範となるものは、科学的な合理主義とは異なっています。


にも関わらず、技術者を含めて行われる事業開発の検討では、


このことを理解していない技術者の態度により、しばしば検討会が紛糾してしまうのです。



2013年2月8日金曜日

イノベーションを台無しにする言葉

新規事業や新たなマーケットの開拓をする責任者が、

こんな言葉を発しているのを見たことがないでしょうか?


1.これじゃ、うまくいかないな。以前、似たようなことを試したが、駄目だった。


相手のためを思って言っているようにも見えますが、

自分の方が経験値が上だと言っているようにしか聞こえません。

以前とは異なる、新たな「組み合わせ」でやろうとしていることを、

本当に理解した上での発言でしょうか?

そして、失敗することを絶対悪だと考えていないでしょうか?


2.いいとは思うけど、売れるの?


そもそも、新しいマーケットを作ろうってことじゃないんですかね?

試してみないことには分からないこともあるはずです。


3.君には、これは無理だよ。


だったら、なんでチーム全体で助けてやろうとしないの?


4.これは、うちの会社がやるべきことじゃないよ。


だから、既存事業でなくて、新規事業なわけでしょ?

私には、ちゃぶ台をひっくり返す、星一徹のようにしか見えません。

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日本の組織では、イノベータのやる気を削ぎ、

時代遅れの価値観を押しつけてしまっていることがあるのではないでしょうか?

これらの内容は、こちらのブログからの抜粋(+私の解釈)ですが、

組織の中でいかなる文化や環境を作り出していくかについては、

責任ある人は、真摯に学んでいく必要があると思います。



2013年2月7日木曜日

探索学習

「探索学習」

という言葉になじみがないという方はおそらく、

「何が問題であるのか」が明確な状況に

身をおいて仕事をしている方である可能性が非常に高いです。



探索学習とは、

SSM(ソフトシステムズ論)という方法論において出てくる基本的な考え方なのですが、

ニーズが明確であり、その対応を考えることが要求される従来の方法論ではなく、

そもそもニーズについても、その対応についても明確ではない、

混沌とした状況

に対応するための方法論における重要なステップを表す言葉のことです。


ちなみに、探索学習の反対語は、

「専門家への丸投げ」

です。







2013年2月6日水曜日

技術者と特許の知識

特許の知識と聞くと、

皆さんはどのような内容をイメージするでしょうか?

特許法の知識、明細書の書き方、出願の仕方、権利のとり方、権利行使の仕方など。

特許の業界人は、おそらくこのようなことをまずイメージするのではないでしょうか?


ですが技術者の視点でみると、

(正直なところ)

「そんなもの、どうでもよい。」

というのが本音です。


「だって、そういう知識は、特許事務所や弁理士の仕事に必要なものじゃないの?」

「なのに、なんで技術者が肩代わりしてそういう知識を持つ必要があるの?」

と思っている方は、実はかなり多いのです。



仕事上、技術者も知財に興味をもって積極的にかかわるよう、

会社の上司に言われているから、

仕方なく対応しているという人によく接します。



そのような実態が存在するにもかかわらず、

技術者向けの特許セミナーの内容といえば、

単なる手続きの話であったりすることが多いわけです。



また、企業の知財部門の発案で、

技術者向けに

「明細書の書き方や読み方」

と題して、文言解釈上、必要になる知識を詰め込むようなセミナーも見受けられます。



このようなセミナーは、知財部の人間が有益と感じる限りにおいては、

いいセミナーとして評価されているものなのですが、

技術者側の視点では、そのようなセミナーは、

本来、知財部や特許事務所側が負うべき仕事の一部を

技術者側に丸投げされていると感じるものなのです。



もちろん、特許の仕事にかかわることで技術者側にも、

そして、彼(女)らを雇う事業会社側にもメリットはあるものです。


しかしながら、そのようなメリットを十分に引き出せるようなセミナーを実行している

特許業界の組織はあまり多くはありません。


このような問題の根底には、

多くのセミナーが提供側の将来的(比較的短期のもの)なメリットを

考えての上での近視眼的な提供に終わっていて、

イノベーション全体を俯瞰した上でのサービスの最適化が行われていない

からだと私は考えています。


もちろん、サービスの提供を受ける側の体制やマインドの問題もあるのは事実です。


知財部門と特許事務所との信頼関係の構築や維持なることすべてが、

技術者の本来の研究開発や、事業化による事業会社側への

貢献につながるわけではないということを、

折に触れて意識していくのは、非常に重要なことであると思います。







(知財専門家が教えない)特許のホントの話


2年程前に他のブログサイトで投稿して非常に反響のあったポストを再掲いたします。
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(知財専門家が教えない)特許のホントの話


この2、3年で知財経営だとか、知的資産経営とかということを語る人が知財業界でかなり増えた。
このような状況の中、米国の個人発明家の書いた1冊の書籍が米国で波紋を呼んでいる。
タイトルがいかにも挑発的である。

直訳すると、

「特許出願なんかしてはいけない」

というもの。

このタイトルを見て、また著者が個人発明家であることを見て、おそらく日本の大半の弁理士はそっぽを向くであろう。
もちろんタイトルはあくまでもキャッチコピー且つ著者の考えにすぎない。

しかし、その内容には知財関係者が気にかけることはないであろう、多くの大切な視点が示されているので私なりの解釈を含めて、簡単に紹介してみたい。

普段、大企業の知財担当者を相手にすることが多く、更に、今後は中小企業を対象とした知財コンサルを行いたいと思っている方には非常に参考になる書籍である。

1.普段専権業務の特許出願をされている弁理士の方は、顧客が出願する領域の許可率を意識したことがあるのだろうか?

著者はこの点をまず指摘している。

個人発明家にとっては、出願にかかる費用はかなりの金額であり、出願してみたものの特許になるのかどうかは、非常に大切なこと。しかし、代理する側としては、そのようなことを気にかけて仕事をされている方は多くないであろう。正直なところ出願してみないとわからないというのが現実のことが多い。だが個人発明家の視点では、登録率の低い分野ならば、最初から教えてほしかったというのが正直なところである。低いなら低いなりに覚悟がいるであろうし、どこまでやりとおすのかを予め決めておくこともできよう。

しかしそのようなことをアドバイスしてくれる弁理士などいないのが米国の実情。


2.個人発明家にとっては、拒絶理由の内容は理不尽極まりない(特に進歩性、非自明性欠如の拒絶)。

代理人であるはずの弁理士は、特許庁側の視点には詳しいが、専門知識を持たない発明家の視点には疎い。本来、出願人にとっての代理人であるはずが、特許庁側の立場を説明をするに終始してしまい、どちらの代理人なのかがわからなくなってしまう。その結果、個人発明家には費用のみならず、特許出願は時間と労力といった貴重なリソースを非常に消耗させるものとなってしまっている。

弁理士の専門知識として、特許庁がどのように拒絶するのかを理解することは非常に重要なことはいうまでもない。しかし、それを個人発明家の視点で十分理解できるように翻訳し、解決策を引き出す能力ということに関しては、考えたことはあるのであろうか? 


3.中小企業や個人発明家は、特許出願’(し、権利取得)することを、彼らの最大の目的とはしていない。

大企業の知財部が特許事務所に出願を依頼する場合には、出願が目的となっているから問題はなかろう。だが中小企業や個人発明家は、他にすることが山ほどあるのだ。そんな彼らに何をどのように提供すれば負担が軽く、効率的なサービスを提供できるのかを是非考えてほしい。


4. なんで、審査にこんな時間がかかるんだ?

まぁ、これは代理人だけの問題ではない。しかし、ビジネスでは時間との勝負であることも多い。この点は、出願依頼を受けるときにアドバイス位はしてほしい。


5.で、結局、いくらかかるんだ?

拒絶理由に次ぐ拒絶理由。勘弁してくれ。ビジネスには予算ってものがあるだろう。


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サービス提供者として、普段、ここまでの苦情を聞くことはそう多くはないと思われます
(書籍内ではもっと辛辣に批判されています)。

怒らずに、たまには真摯に聞いてみるのもいいのではないでしょうか。

この書籍では、これらのことはあくまでも序章にすぎません。個人発明家がビジネスを遂行するための様々な注意点が記載されています。本書の後半部分は、起業のための参考書といえる内容でです。起業家精神に乏しいと思われる方にはとくに有益と思われます。

その中で、知財関係者には特に興味を引かれるであろう内容もあります。

米国で侵害訴訟を起こしたらどうなるのか?

これについては、金銭面を含め、裁判所や弁護士との関係等、普段耳にすることがない情報が赤裸々に記載されています。

このような経験を通じて、著者は、

「特許出願なんかしてはいけない」

という結論に達しています。

タイトルを読んだときには反感を感じていたであろう方も、この説明を読んでどのように印象が変わったでしょうか?

弁理士なら、特許を取得することの大切さ、取得しないことのリスクについては良く理解されているでしょう。
しかしそのような理解と、プライドは一旦置いておき、個人発明家の視点というものを是非理解してみることは、以後のサービス提供に大きな影響を与えるのではないでしょうか。

専門性へのプライドは、一歩、引いてみれば、周りが見えない、単なる専門バカでもあるはず。中小企業、個人発明家相手へのサービス提供は、思っている以上に敷居が高いかもしれません。



以上、米国での話ですが、これを読まれた日本の知財関係者の皆さんはどのように感じられたでしょうか?


2013年1月31日木曜日

俯瞰を阻害するもの

前回は、イノベーションの第一歩として俯瞰することを指摘しました

では、俯瞰を行う際に、なにが邪魔となるのでしょうか?



より一般化した表現を用いると、

フレームワーク

ということになると思います。

人はそれぞれ、経験や知識に基づいて、

さらに、利害関係に影響されて、

自らのフレームワーク、すなわちモノの見方を習得しています。



そしてこの、モノの見方というのは、多くの場合、

各人のプライドや存在意義とも結びついています。



たとえば技術者は、一般的に客観的、分析的に物事を捉えようとします。

これは、要素還元主義的なフレームワークといえると思います。



客観的、分析的であることは、一般には好ましい態度であると考えられますが、

イノベーションを起こす際には、むしろ主観的なものの見方というものも、

有効であることは、技術者に知ってもらいたいものです。

とくに、B to Cのビジネスや、顧客へのサービス提供を検討する際には、

自分の専門分野で培ってきたフレームワークは、いったんは置き去ることが必要です。


なお、フレームワークによってモノの見方を固定しないのは、

あくまでも、俯瞰する時の態度です。


分野の異なる人のモノの見方を整理する際には、

自らフレームワークを意識して、

このフレームワークを操作することで、

俯瞰する作業が行いやすくなります。

要は、フレームワークに左右されるのではなく

(複数の)フレームワークを操作して

モノを観察しようということなのです。





2013年1月30日水曜日

イノベーションの第一歩

皆さんは、イノベーションは何から始まるとお考えでしょうか?


日本では、かねてより技術立国だとか、知財立国だとか言われ、


技術偏重の傾向が一部にはありますが、


私は


「俯瞰すること」


がイノベーションの開始には非常に重要だと考えています。


俯瞰することは、すなわち、細部はさておき大局的に物事を見つめることでもあります。


別の言い方をすると、


「脱専門性」


でもあります。


技術立国、知財立国という考えが浮かんだ方は、


自然と技術や知財を真っ先に考えるのですが、


技術や知財を、社会やビジネスのシモベとすることができないと、


結局は、特定業界や特定専門家たちの我田引水的な成果しか望めないと思います。






2013年1月11日金曜日

デザイン思考を始めるために必要なこと

IDEO社が規定するイノベーションの構成要素には、次のものがあるとされています。

(1)技術的な実行可能性(Technical Feasibility)

(2)ビジネスとしての実現可能性(Business Viability)

(3)人間としての望ましさ(Human Desirability)

参考


(1)や(2)については、技術的観点、経営的観点からビジネス分析を行う際には、

当然検討する事柄であろうと思います。

(3)についてはどうでしょうか?


デザイン思考(Design Thinking)では、この(3)の視点を重要視していることを特徴としています。

(1)~(3)の構成要素は、積み上がってできるものではなく、

互いにオーバーラップして、その中心にイノベーションが存在すると、IDEOでは捉えています。


そしてイノベーションの実現のため、デザイン思考では、

(A)着想(Inspiration)

(B)概念形成(Ideation)

(C)実装(Implementation)

という3つの行動をとるのですが、
4つに分類する方法等もありますが、ここでは便宜上3つに分類します)

具体性のある(C)と比較すると、(A)や(B)は、より抽象的であり、漠然とした内容であるため、

これらをどのように行うのかは、技術者や経営者には分かりにくいものとなっています。


ポイントは、

独立性と多様性のある人から、
(これは、ユーザーであったり、顧客やクライント等が該当します)

彼(女)らの感性や知識をうまく引き出すということ

にあります。


専門性の高い技術者は、このような行動を行うのを苦手としている人が多いようです。



そのような方たちへのサポートとしては、

(a)思考様式を、左脳(論理重視)型から右脳(感性重視)型へと転換する

(b)直観を軽視しない

(c)漸進的に物事を進める

ことを理解してもらうことから、始めるのが非常に有効です。